生産者の想い

 

 「33才で会社を立ち上げた当時、子どもも小さく、先行きの保証も無い。ましてや地域単位で営農組合さんがすでに田んぼの管理をしている中、仕事の手を広げるのは容易ではなかった。」

 そう語るのは、サンファームの島倉さん。

 仕事を始める上での自分に充てたルールは、近隣とのトラブルの無いようにし、一度預かったらコミュニケーションを欠かさない事。

 実際、「田んぼを預かってほしい」と頼まれても、すべての仕事を預かる事をあえてしない。

 理由は、預けた側には、まだ動く機械もあり、時期になれば都会に出た息子さんが戻り手伝ってくれたりもする…。その家、その家の様子をみて、考えながら一つの田んぼを『シェア』するのだ。まるで農業コーディネーターの様である。

 今やあらゆる分野がシステム化と効率化が計られ、進化している。しかし、その先にあるのは『人間味があり、人間的な方法』を重んじる世界なのでは。

 島倉さんにとって預けられる「田んぼ」は収入を得るための【物】ではない。人と人、地域と人のコミュニケーションをつなぐ場所。

 この仕事を続けてきた中で、そしてこれから続けていく中で、一番大切にしていることは何ですか?と聞いてみた。

 姿勢を正し、「人の和」だという。そして、お金を出したくなる仕事。「『預けてよかった』と思ってもらえる仕事をする。そうでないと満足してもらえない。満足してもらえないと、次の仕事がないと思っていす。」「仕事をさせて頂ける事はありがたいです。」と優しい笑顔でこちらを見た。

 田んぼの仕事をすべて預からずに一緒に仕事を進めるのは、暮らしの中でハリをもってほしいから。「今年も助けてくださいませんか?」と。「田んぼと長く携わってもらうことで、元気にいてもらえれば、いつまでも仲良く付き合っていける。」「会社の成長の伸びは遅くても、ゆっくりと広がっていけばと思っています。」

 地域の人との信頼がないと、田んぼは預けられない。

 平成6年から関西方面に米を通信販売しているサンファームさんでは、今年ホームページを開設する。

 ここ富山でどのような米の作り方をしているのか知ってほしい。嘘じゃない本当の言葉で情報発信をしたい。

 そして、実際にお米を食べてくれている方ともっとコミュニケーションをとりたい。

 また、一番美味しいお米とは、結局自分の手を加えて育てたお米だと。「すぐには難しいけど、たくさんの人がサンファームに訪れて、お米作りの見学や体験をしていただき、そのお米を食べてもらえればうれしい。」

 会社を立ち上げた当初から今まで。そしてこれからも島倉さんの思いは、変わることがない。

 いつでも中心は、人の和である。

 この文章はおやべローカルかわら版で紹介されました記事です。